1.地球温暖化、地球規模変動の問題は、自然と科学、そして社会の関係性の中に位置づけられ、急速な人間活動の拡大が、自然の占有、そして改変を進めていることによる多様な変化の主要要素となっていることを示した。 2.地球規模変動では、人間活動次元の研究が、自然の不確実性以上に、将来の変動の大きな不確実性要因であるが、研究としては、1980年代以来、社会科学面からの研究は、自然科学研究と距離をおくようになっている。それは、社会科学では、分野ごとに独自の世界観、将来社会のイメージを持ち、研究分野間の共通した基盤を形成することが自然科学以上に困難であるという状況が見られたことによる。しかし今日、社会科学とともに、社会と自然の間の相互作用としての変動分析の必要性から、統合的なアプローチが求められている。 3.これら問題は、自然と社会の境界、そして科学と政策の境界に生じてくるが、この境界は固定的でなく、交渉のプロセスにより形成され、相互に深く浸透している。この境界をいかに結びつけるかということが、トータルシステムの持続性と健全性、そして安定性にとってクリテイカルな課題である。これをバウンダリープロブレムとして位置づけ、分析している。 4.米国においては、地球規模変動研究を気候変動研究と一体化し、不確実性を小さくしようとの試みをはじめた。しかし、この成果の見通しは短期には困難だが、エルニーニョなどの変動研究と社会の適応性向上成果が期待でき、その過程で長期変動への理解も進展するという期待が持てる。
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