地球システムの変動に関する米国政府による研究は、1990年に成立した「地球規模変動研究法」以来、世界最大の規模を誇って、2003年には「気候変動研究法」へと拡大・展開している。この研究プログラムの成立、進捗のプロセスにおいては、科学研究グループと政策策定グループの相互間の様々なやり取りがあり、その内容と研究体制が構築されて来ている。さらには2001年の米国の京都議定書脱退とも絡んで、今後米国がとると思われる国際的な政策スタンスにも重要な位置づけを占めてきており、このプロセスを検討することで、科学と政策の関係構築の関するひとつのモデルを得ることが出来る。 本研究では、この成立の段階においては、様々な言説が相互に拮抗し、さらには連携していくプロセス(言説連携)としてとらえ、またその進捗段階においては、NRCを中心とする外部評価など、社会的な正当性を得る進め方(論証的プロセス)に注目している。しかし、この研究プログラムでは、自然現象としての地球システムと、人間社会としての活動拡大に伴う相互間の影響の深まりが、科学と政策の双方の共通した対象であり、中心課題となっているが、その間の対応、方向づけにおける軋轢は科学面での不確実性と共に、政策面での不確実性が存在することから生じている。米国政府の気候変動プログラムでは、政策策定のためにはまず科学的不確実性を小さくする方針をとっている。しかしこれは、扱いの難しい、論争的な問題となるため、ブレークスルーのためには科学的な研究・学習を進めると共に、政策的な代替案を多面的に提起・議論していくことが求められる。そして双方それぞれが明確化していくと共に、適応、交渉の戦略をとることが出来る。これを科学と政策の関係における進化論的なアプローチとして分析を行っている。
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