植物油は再生可能な資源であり、燃料サイクルでの二酸化炭素排出量を削減しうることから、ディーゼル機関の代替燃料として期待されている。しかし、植物油は粘度が高く高沸点・低蒸発性であり、改質せずにそのまま用いた場合には炭素状物質堆積などのために重大な障害を引き起こすことが知られている。本研究の目的は、植物油に低沸点、高蒸発性の含酸素化合物、あるいは通常のディーゼル燃料を直接ブレンドするという最も簡便な改質法を採用することで圧縮着火機関用燃料としての適性を確保し、この種燃料をディーゼル機関に適用した際の燃焼性を明らかにすることにある。 本年度は、軽油ブレンドなたね油燃料における軽油添加率が噴霧性状(噴霧の貫徹力、噴霧角)、ならびに噴射特性(燃料噴射率)に及ぼす影響について実験を行った。さらに、植物油を含有する燃料の油滴を、細い石英棒に懸垂し、高温に保持された電気炉内にすばやく挿入した場合の蒸発、および燃焼の挙動について調べた。研究の結果、なたね油に対して等量以上の軽油をブレンドすることにより、噴霧性状は顕著に改善されること、なたね油を含有する燃料では発熱量が低下するために燃料噴射率は低下すること、などが明らかとなった。懸垂油滴燃焼の実験では、ニートなたね油の着火性は軽油に比べると非常に悪いこと、25%以上の軽油を添加することにより着火遅れは大幅に短縮すること、などが明らかとなった。また、なたね油の油滴では燃焼中に沸騰が生じ、油滴形状が激しく変形するなど、軽油とは著しく異なった挙動を示した。
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