植物油をディーゼル機関の代替燃料として利用するためにエステル交換を行う燃料改質法が適用されているが、製造コストや副生成物であるグリセリンの処理、などの問題がある。本研究では、植物油(菜種油)に低沸点・高蒸発性の含酸素化合物、あるいは通常のディーゼル燃料を直接ブレンドするという最も簡便な改質法を採用することで圧縮着火機関用燃料としての適性を確保し、この種燃料をディーゼル機関に適用した際の諸特性を明らかにすることを目的として研究を行った。 (1)噴霧特性、および噴射特性:軽油ブレンド菜種油の噴霧性状を高速度瞬間撮影により観測した結果、菜種油に対して等量(50%)以上の軽油を混合することにより噴霧性状(噴霧角、および噴霧の到達距離)は顕著に改善された。また、菜種油では軽油に比べ噴射期間が長く、平均的な噴射率(熱供給率)が低下するのに対して、等量混合油では若干軽油よりの特性を示した。 (2)懸垂油滴燃焼の特性:毎秒100コマの速度でビデオ撮影した画像を解析した結果、25%以上の軽油を添加することにより、菜種油の極端に悪い着火性が大幅に改善されること、等量混合油では軽油燃料で生じた燃焼末期のすす生成が顕著に抑制されること、などが明らかとなった。また、ろ紙に採取したすすの質量を測定した結果、エステル化燃料のすす生成量は軽油の1/3程度であった。 (3)機関性能、および排出物:8種の含酸素化合物を改質剤として選定し、機関諸性能を調べた。その結果、2-エトキシエタノール、2-n-ブトキシエタノール、ジ-n-ブチルエーテルを菜種油に対して20〜50%添加した燃料は、いずれも高負荷では軽油に匹敵する正味熱消費率を示す一方、黒煙濃度は燃料中の酸素分率の増大に対して直線的に低下することが明らかとなった。
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