研究概要 |
アルカリ金属熱電変換(AMTEC)は熱再生型濃淡電池の一種であり,発電部の素子形状を小型化し,単位体積あたりに収まる電極面積を増加させることにより高性能化が可能となる.しかし,現状の集電方法(金属網を使用)では,特にカソード側電極部に問題が生じ,素子小型化は不可能である.そこで本研究では,レーザCVDを用いて集電構造を直接カソード側電極膜上に描画することを提案し,性能向上に関連する要因を明らかにすることを研究目的とした. 本年度は,Ar^+レーザを用いて数10μ程度の集電構造体を電極薄膜上に作成することを具体的な研究目的とした.電極薄膜材料にはMoを使用していることから,集電構造材料にMoを選定した.レーザCVDに使用する反応ガスはMo(CO)_6とした.研究計画により,Mo(CO)_6の吸収波長は300nm以下であることから,レーザ2倍波(257nm)を用いて光CVDを検討した.しかし,予備実験によりアルミナ上に形成されたMo堆積物の導電性は非常に小さく,リード構造に適用するには不十分である結果となった.他研究機関より光CVDによる導電性Mo堆積物が報告されており,堆積速度,基板温度等を変化させることにより導電性向上は可能と考えられる.しかし,熱CVDによる堆積方法が導電性向上に対して有効である報告より,本研究でも堆積方法を熱CVD法に変更した.Mo(CO)_6の分解温度は150℃である.光照射スポット径が現状では大きい状態(0.1mm)ではあるが,堆積構造が認められた.入射条件等を今後考慮することにより,AMTEC電極リードとして適当な構造体の形成が可能といえる. リード構造作製実験と並行して,基盤となる電極薄膜特性に関する検討を実施した.導電性,Naガス透過性を検討し,また温度変化に伴う構造変化を評価した.今後,基板となる電極薄膜の特性データよりリード構造の最適化が必要であり,電極部性能の解析計算方法を導入した.今後実際のリード構造体の測定値を得ることにより,最適化計算が可能である.
|