高レベル放射性廃棄物の地層処分における、ベントナイト緩衝材の長期健全性を評価するための基礎的研究として、処分後長期経過後に緩衝材であるNa型ベントナイトに起こると考えられる緩衝材の変質反応のうち、炭素鋼製のオーバーパックの腐食による鉄型化反応について検討した。まず、オーバーパックの腐食生成物がベントナイト中に拡散した状態を模擬した試料として、モンモリロナイトの交換性陽イオンをFe^<2+>イオンに置換したFe型モンモリロナイトならびに鉄型モンモリロナイトを酸化させた試料を調製した。次に、Na型モンモリロナイトの鉄型化を、メスバウアー分光法ならびに陽イオン交換容量等によって確認した。メスバウアー分光法では、層間位置のFe^<2+>イオンに起因すると考えられる吸収ピークが1.5mm/secに現れることが明らかになった。さらに、NH_4^+との交換によって求めたFe型モンモリロナイトの交換性の鉄イオン容量は、57±6mmol/100gであり、Feイオンが2価であると考えた場合のモンモリロナイトの陽イオン交換容量(113meq/100g)とよく一致することが判った。一方、酸化させた鉄型モンモリロナイト試料では、層間のFe^<2+>イオンによると考えられる吸収ピークは認められず、X線回折から酸化水酸化鉄の存在が示唆された。 鉄型および酸化させた鉄型モンモリロナイトへのSeの収着実験では、Na型モンモリロナイトがFe型化することによって、またFe型モンモリロナイトが酸化することによって、これらの試料へのSe(IV)ならびにSe(VI)の収着率が増加することが明らかになった。これは、オーバーパックの腐食に伴って鉄イオンがベントナイト中に拡散した場合、イオン交換によって鉄型モンモリロナイトが生じ、それがSeの収着率を上げる可能性を示唆するものである。
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