高レベル放射性廃棄物の地層処分におけるベントナイト緩衝材の長期健全性を評価するための基礎的研究として、処分後長期経過後に緩衝材であるNa型ベントナイトに起こると考えられる変質反応に関する基礎的研究を行った。 このうち、炭素鋼製オーバーパックの腐食に伴いベントナイトが鉄型化する反応については、無酸素雰囲気下のグローブボックス内でベントナイトをFe^<2+>イオンを含む溶液と接触させ、交換性陽イオンをFe^<2+>イオンに置換した「Fe型試料」およびこのFe型試料を大気中で酸化させた「酸化Fe型試料」を調製し、両試料の特性評価を選択的逐次抽出法、メスバウアー分光、X線回折などによって行った。その結果、Fe型試料では層間のイオンがFe^<2+>イオンに置換していること、酸化Fe型試料ではそれらの層間のFe^<2+>イオンが徐々に酸化して非晶質遊離鉄として析出していることなどが示された。さらに、両試料へのSeの収着実験においては、Na型試料のFe型化、Fe型試料の酸化によって、Se(IV)ならびにSe(VI)の収着率が増加することが明らかになった。 一方、セメント溶解反応に伴うベントナイト変質反応に関する研究として、Na型とCa型が混在したベントナイト中でのNa^+およびCa^<2+>イオンの見かけの拡散係数、ならびに塩濃度の異なるNa型試料中のNa^+イオンの見かけの拡散係数を実験から求めた。その結果、見かけの拡散係数に及ぼすNa/Ca比および塩濃度の影響は小さいことが明らかになった。しかしながら、Na^+イオンの見かけの拡散係数の温度依存性より求めた拡散の活性化エネルギーには、塩濃度の顕著な影響が認められた。これは、塩濃度の増加とともに、ベントナイト試料中の支配的な拡散プロセスが変化しているとのモデルで説明できた。
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