研究概要 |
本研究では、金属含水酸化物コロイド粒子とアクチノイドの相互作用を実験系を乱さずに評価するための手法を確立することを目的に、荷電粒子励起X線分光(PIXE)法による種々の溶液条件でのウランと金属含水酸化物の定量分析を検討した。 ウランの金属含水酸化物コロイドへの収着挙動に関するPIXE分析による検討では、ナノグラムレベルの粒子態及び溶解種が迅速に定量できることを明らかにした。更に、X線分光的にウランのPIXE定量の妨害となる元素の影響については、ウランの選択的濃縮分離とパターン解析に基づくスペクトル解析によって5ppbの極希薄な濃度まで正確に定量できることを確認した。また、岩石風化生成物という観点からAlとFeの含水酸化物コロイドに注目して検討した結果、浅地層地下水条件で最も化学的に安定なUO_2^<2+>の金属含水酸化物に対する収着特性は、溶液中の主成分である典型元素とは異なり、遷移金属イオンの特異的な収着挙動と類似しているが、溶液から分離された収着母材中の金属元素と収着したウランはPIXEによって高い精度で迅速に分析できる。 PIXE法による元素の化学状態分析の検討では、Fe等の重元素の化学状態分析を目的とした70 MeV ^<12>C^<3+>照射によるPIXEとAl, Si等の軽元素の化学状態分析を目的とした波長分散型PIXE測定を検討した。極微量の試料(10-80μg)の^<12>C^<3+>照射によるPIXE法は、Cr, Mn, Feの3d元素のK_β/K_α X線強度が化合物としての結晶構造の対称性と3d電子の結合軌道への関与の程度を反映して変化することから、重元素の化学状態分析法として有効であることが確認できた。波長分散型PIXE測定に関しては、X線エネルギー範囲0.504-2.16keV(5inch フタル酸ルビジウム回折結晶)で2eVの分解能を有した装置の開発を目指したが、装置性能は未だ調整段階にある。
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