ガドリニウム(Gd)は中性子吸収断面が大きいため、原子力分野では可燃性毒物として有用な元素である。Gdは7個の同位体があり、その中で^<157>Gdの中性子吸収断面が特に大きく、これを濃縮することにより原子炉燃料の利用率(燃焼率)を増大させることができる。Gdのレーザー同位体分離を考えた場合、同位体シフトを用いる方式は困難であり、偏光レーザーを用いた手法が適当であると考えられる。しかし、原子蒸気発生用電子ビーム銃には強力な磁石が使用されており、上述の偏光レーザーを用いる方式は原理的に、磁場によって選択性が低下することが予想されている。したがって、実際、Gd等のレーザー同位体分離を考えた場合、レーザー照射領域にかかる磁場がどの程度許されるのか検討しておくことは重要なことである。 以下に本研究で得られて成果を述べる。 1.レーザーを用いた同位体分離の手法により、実験室レベルでは非常に高い選択性が得られた。 2.磁場中における同位体分離実験から、選択性の低下が観測された。 3.磁場強度、磁場の相対的角度、レーザーの遅延時間などを変化させて、分離実験を行い、選択性を測定した結果、開発した計算コードによる数値解析結果と非常によく一致した。 4.計算コードおよび実験で、パルス幅5nsのレーザーを用いた場合、20mTの磁場によりほぼ完全に選択性が喪失することが示された。このことは、銅蒸気レーザー励起色素レーザーのようなパルス幅が50ns程度の場合には10分の1の2mTの磁場で選択性が喪失することを示すものである。
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