研究概要 |
本研究の目的は、京都大学原子炉実験所に付設されている46MeVの電子線型加速器(ライナック)を用いた12mの飛行時間(TOF)分析法によって、熱中性子から共鳴中性子領域における核分裂生成物核種の中性子捕獲断面積を測定し、従来の実験値、評価値に対して実験的に評価検討を加えることにある。 本年度は、核分裂生成物核種としてTc-99、Rh、Inを取り上げ、ライナックTOF法においてそれらの中性子捕獲ガンマ線(即発ガンマ線)を測定する手法によって中性子捕獲断面積を測定した。実験試料の形状、放射性物質であるか否かの点から種類の検出器を用いた。まず、放射性試料であるTc-99の測定では、試料や測定器周辺の物質で散乱された中性子にも感度の低いガンマ線検出器として一対のC6D6液体シンチレータ(直径11cm、厚さ5cm)を採用した。入射中性子束/スペクトルは、よく知られた10B(n,α)反応断面積を用いて測定し、これに対する相対値として得た99Tc(n,γ)100Tc反応断面積を熱中性子(0.0253eV)における標準断面積値に規格化した。放射性でないRh、In核種では、1OB(n,α)反応を使って入射中性子束/スペクトルの測定を行うと共に、12個のBGOシンチレータを組み合わせた全エネルギー吸収型の測定器を用いて、Rh、Inの(n,γ)反応断面積を絶対値として求めた。 99Tc(n,γ)100Tc反応断面積の測定では、従来得られていなかったeV領域のデータについて測定することができ、評価済核データの見直しにとって有用となる新たなデータを提供することができた。Rh、Inの中性子捕獲断面積についても、中性子共鳴領域/低エネルギー領域において、従来データが欠落していたデータ、実測/評価データの間に不一致が見られた領域のデータについて実験的に新たな評価を加えることができ、今後の核データ評価に反映が期待されるデータを得ることができた。 Inの中性子捕獲断面積はAnnals of Nuclear Energyに投稿、発表し、Tc-99の測定結果はJ. Nucl. Sci. Technol.に投稿したところである。Rhの(n,γ)反応断面積は、Tc-99の測定結果と一緒に国際シンポジウムに発表し、現在は学術専門雑誌に寄稿する準備を進めている。
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