研究概要 |
本研究の目的は、京都大学原子炉実験所に付設されている46MeVの電子線型加速器(ライナック)を用いた12mの飛行時間(TOF)分析法によって、熱中性子から共鳴中性子領域における核分裂生成物核種の中性子捕獲断面積を測定し、従来の実験値、評価値に対して実験的に評価検討を加えることにある。 本年度は、核分裂生成物核種としてTc-99、I-129、Pr-141を取り上げ、ライナックTOF法とそれらの中性子捕獲γ線(即発ガンマ線)測定によって、それぞれの(n,γ)反応断面積を測定した。これら試料のうち、Tc-99及びI-129は放射性物質であり、Pr-141は非放射性の安定核である。これらの捕獲γ線測定においては、生成複合核の崩壊図式には依存しない検出効率をもつ全エネルギー吸収型の検出器を使用した。これは12個のBi_4Ge_3O_<12>(BGO)シンチレータ(各大きさは5cmx5cmx7.5cmを組み合わせ、その中央部にはTOFビームを導く貫通孔が設けられている。入射中性子束/スペクトルは、よく知られた^<10>B(n,α)反応断面積を用いて測定し、これに対する相対値としてTc-99、I-129、Pr-141それぞれの(n,γ)反応断面積を測定し、熱中性子(0.0253eV)における標準断面積値に規格化した。 ^<99>Tc(n,γ)^<100>Tc反応断面積の0.005eVから47keV領域における測定では、従来得られていなかったeV領域のデータについて測定することができ、評価済核データの見直しにとって有用となる新たなデータを提供することができた。また、TOFデータの結果から5.6eVと20.3eVでの共鳴パラメータを導出、共鳴積分値を算出して従来の共鳴データに対しても実験的評価を加えた。I-129の捕獲反応断面積では、0.004eVから50keV領域における新たな測定として、特にkeV以下の領域においては今後の核データ評価に有用となるデータを提供した。Pr-141では、まず、TOFデータを規格化する熱中性子標準断面積を放射化法と原子炉の熱中性子標準場を用いて測定し、これにTOF法によって得た0.003eVから140keV領域の測定データを規格化した。1,2の評価済核データにおいては、約10eVから数100eV領域において共鳴構造の谷部で低くなっていることを除けば、従来値は全体に本実験値と一致する傾向にある。
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