CR-39飛跡検出器中に形成されるイオントラックのトラックコアサイズについて、2つの方法を利用して評価した。一つは、極短時間のエッチングと原子間力顕微鏡観察とから求める、微少エッチピットの成長挙動よりコアサイズを求めるものである。もう一つは、トラックオーバーラッピングモデルと紫外-可視吸収スペクトルのフルエンス依存性とに基づく方法である。トラック径は、プロトンからゼノンイオンまで、数nmのオーダーであり、阻止能の3乗根にほぼ比例することが見出された。トラックの線量分布モデルによると、イオンの軌跡から数nmの距離における吸収線量は数百kGy以上に達する。これを模擬するために、ガンマー線や高エネルギー電子を高線量まで照射した同検出器のエッチング特性を評価した。損傷がラジカルと溶存酸素との反応によって形成されると仮定し、それらが質量バランス式と拡散方程式に従うとするモデルを考案し、数値計算を行った。同モデルが実験結果において見られた、線量、線量率、深さ依存性をよく再現することが明らかになり、トラック形成も同様な酸化反応によるとが考えられた。次いで、損傷の化学構造を知るために赤外線吸収スペクトルやラマン散乱スペクトルを求めた。照射後の同検出器中にはCO_2ガスとOH基の生成が確認された。数nm程度の拡がりを持つ同検出器中トラックでは、ポリカーボネイト結合部がCO_2ガスを放出して分子鎖の新たな端点を形成し、その近隣部分がOH基によって装飾されていると考えられる。エッチング速度は親水基であるOH基濃度によって律速されると考えられた。
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