研究概要 |
原子力の有効利用を進めるうえで、ウラン資源の開発、使用済み核燃料の管理、放射性廃棄物の処理などの問題とともに、放射性物質の人体に及ぼす影響の研究が一層重要な課題になると考えられる。申請者はこれまでに、ウランが過酸化水素と反応し、ヒドロキシラジカルを発生することを見いだした。ウランなどのアクチノイドがどのような機構でヒドロキシラジカルなどの活性酸素を発生するのか、生体系が活性酸素の作用をどのように制御するのかは、アクチノイド研究の重要な課題であり、原子力の有効利用に大きな影響を与えるものと考える。本年度は、まず、スピントラップ法によりウラン-過酸化水素系におけるヒドロキシラジカルの消長を解析し、ウラン(VI)が過酸化水素によりウラン(V)に還元され、不均化反応、フェントン型反応により、ヒドロキシラジカルを生成し、ウラン(VI)に戻るプロセスで説明できることを明らかにした。また、微生物及びタンニン化合物が、ウラン-過酸化水素系において、ヒドロキシラジカルの生成を抑制することを見出した。一方、ウラン、銅、バナジウムなどヒドロキシラジカルを生成する重金属イオンと、微生物やタンニン化合物との相互作用についても電子スピン共鳴法により解析した。これらの成果は、学術雑誌: World Journal of Microbiology and Biotechnology, Vol.17:343(2001)、磁気共鳴と医学, Vol.12:61, 80, 171(2001)、Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry, Vol.247:347(2001), Water Research, Vlo.36(2002), Talanta Vol.57(2002)に発表するとともに、第23回磁気共鳴医学会・第5回SFRRJapan合同学会(横浜,2001年5月)、Third International Symposium on Nuclear Analytical Chemistry(NAC-III)(June 11-14,Halifax, Canada)、Third Asia-Pacific EPR/ESR Symposium(APES'01)(Oct.29-Nov.1, 2001, Kobe, Japan),Actinide2001(Nov.4-10, Hyama, Japan)、日本化学会第81春季年会(東京,2002年3月)において学会報告した。
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