研究概要 |
原子力の有効利用を進めるうえで、ウラン資源の開発、使用済み核燃料の管理、放射性廃棄物の処理などの問題とともに、放射性物質の人体に及ぼす影響の研究が重要な課題である。とりわけ、ウランなどのアクチノイドがどのような機構でヒドロキシラジカルなどの活性酸素を発生するのか、生体系が活性酸素の作用をどのように制御するのかは、アクチノイド研究の重要な課題であり、原子力の有効利用に大きな影響を与えるものと考える。昨年度までの研究で、ウラン-過酸化水素の反応を解析するとともに、該系におけるカテキン、タンニン、ビタミンCなどの抗酸化物質などの挙動を解析した。今年度は、ウラン-過酸化水素系の反応及び該系における抗酸化物質の挙動をより詳細に解析し、生体系に進入した劣化ウランが生体に及ぼす化学毒性とウラン-過酸化水素系で生成する活性酸素(ROS=Reactive Oxygen Species)の関係を検討した。さらに、生体系における活性酸素計測技術の向上を目途として、ESRフローインジェクション法の開発と応用について検討した。これらの成果は、学術雑誌:World Journal of Microbiology and Biotechnology Vol.19;369(2003), Analytical Science Vol.19;1075(2003), Neurochemical Research Vol.28;1895(2003), Journal of Radio-analytical and Nuclear Chemistry ; in press (2004)に発表するとともに、日本原子力学会「2003年春の年会」(佐世保,2003年3月)、第25回日本フリーラジカル学会学術集会(東京,2003年6月)、第7回ESRフォーラム研究会(京都,2003年6月14日)、第42回電子スピンサイエンス学会年会(広島,2003年10月)において学会報告した。また、日本原子力研究所基礎科学セミナー「微生物と重元素との相互作用解明研究」(東海,2003年6月)において招待講演を行った。
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