平成13〜15年度の研究で、スピントラップ法によりウラン-過酸化水素系におけるヒドロキシルラジカルの消長を解析し、ウラン(VI)が過酸化水素によりウラン(V)に還元され、不均化反応、フェントン型反応により、ヒドロキシルラジカルを生成し、ウラン(VI)に戻るプロセスで説明できることを明らかにした。また、微生物は、ウラン-過酸化水素系において、ヒドロキシルラジカルの生成を抑制するが、カテキン、タンニン、ビタミンCなどの抗酸化物質は、生成を抑制する作用と増強する作用があることも明らかにし、これらの物質と重金属イオンとの相互作用が、ヒドロキシルラジカル生成の抑制・促進に関係していることを見出した。一方、ウランによる活性酸素生成が動物体に及ぼす影響を解析する目的で、神経モデルPC12細胞、病態ラット等における活性酸素計測技術を確立するとともに、生体系における活性酸素の高感度計測を目途として、ESRフローインジェクション法の開発と応用について検討した。以上の結果を総合し、ウランが生体に及ぼす化学毒性とウラン-過酸化水素系で生成する活性酸素(ROS=Reactive Oxygen Species)の関係を議論した。これらの成果は、27編の学術論文、36件の学会発表として公表した。
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