研究概要 |
北海道利尻島の標高別、層位別に採取した土壌試料を用いて、一般理化学性の分析、土壌有機物の分析、地温計の解析を行なった。標高別の地点は、標高20m付近のチシマザサ草原、標高50m付近のエゾマツ・トドマツ林、標高500m付近のチシマザサ草原、標高700m,1200m,1400m付近のハイマツ林の全6地点である。 土壌の一般理化学性の分析と土壌有機物の分析より、pH(H_2O)は標高が高くなるにつれて低下、C/Nが増加し、O層は標高が高い地点で厚く積もっていることから、標高が高くなるほど有機物が分解されずに残っていることが示唆された。また、塩基飽和度は標高が高くなるにつれ低下しており、pH(H_2O)の低下の一因になっていることが考えられた。リン酸吸収係数・リン酸吸収量の結果より、標高50mを除く地点では火山灰を母材としていることが明らかとなった。腐植の分析の結果より、標高が高くなるにつれ腐植化度が低下する傾向が認められた。地温の測定結果より、標高が高くなるほど地温は低下し、その低下の程度は気温の逓減率(-0.6℃/100m)に比べてかなりゆっくりとした減少であった(-0.36/100m)。これは、地中には水分が存在することと、積雪期の間雪で保温されることがあるために、ゆるやかなものとなったと考えられた。このことから、標高が高くなるにつれ腐植化度が低下する要因としては、低標高の地点では草本植生下で、有機物の投入が多く、比較的暖かいために腐植化が進行するが、高標高の地点では、地温が低いため有機物が分解されにくく、腐植化の進行が遅いと考えられた。
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