研究概要 |
本年度は以下の2点について行った。 1.帰化植物オオブタクサ生長に対する温度と窒素態比の影響解析 オオブタクサについて、群馬県内の分布北限で、低温環境である水上町に自生する個体群と、南部の伊勢崎市の個体群を用いて、現地個体の生長解析、気温・土壌窒素態比比較を行った。また、群馬大学構内で窒素肥料投与実験下での生長解析、種子生産量比較を行った。その結果、水上に自生するオオブタクサは、伊勢崎のオオブタクサよりも相対生長速度が遅いことが確認された。また、伊勢崎の土壌が水上の土壌よりも20倍以上も硝酸態窒素濃度が高いことが明らかになり、両調査地点のオオブタクサにおける生長と個体サイズの差には、気温の違い(約10℃)と土壌窒素態比の違いが影響していることが示唆された。窒素肥料投与実験においては、硝酸態窒素・アンモニア態窒素比の異なる栽培区を設けて生長解析を行った。その結果から,オオブタクサは硝酸態窒素を好むこと、気温が同じなら相対生長速度に地域個体群間差がないことが示された。以上より、今後の温暖化や河川汚染の進行によって、オオブタクサの個体の巨大化がさらに直接的に促進されることが示唆された。 2.実験モデル植物オオマツヨイグサを用いた植物生活史の可塑性の解析 可変性二年草の生活史をとる植物のモデルとしてオオマツヨイグサを想定した確率的個体群動態モデルにより,変動環境が個体群の増殖に与える影響を検討した.その結果,平均的な環境が同じでも環境変動の程度が大きいほど個体群の増殖率は低下することが示された.
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