研究概要 |
本年度は、海洋細菌によって生成された溶存有機物の化学組成の特徴を明らかにするための手法の検討が主目的であり、特に以下の2点について中心に検討を行った。 1 限外ろ過法による溶存有機物の詳細なサイズスペクトラムの解明 現在、一般に使われている分画分子量1,000の限外ろ過膜を使った海水中の溶存有機物のサイズ分画法に加え、分画分子量100,000、30,000、10,000、3,000の限外ろ過膜を連続して使用することにより、より詳細なサイズスペクトラムを得る方法を検討した。試料として海洋細菌が生成する溶存有機物の比較対象となる、現場海水試料を用いた。分画法の検討は白鳳丸のKH01-3次航海における船上において、南太平洋の赤道域から亜寒帯域までの表層および深層海水を用いて行った。現在、これら分画した試料に対し有機炭素及び窒素濃度の測定を進めている段階である。 2 海洋細菌の増殖に対する基所のC:N比と生成された溶存有幾物のC:N比の比較 当該研究者らによるこれまでの成果により、海洋細菌により生産された溶存有機物は、増殖に使われた基質に比べC:N比が高くなる傾向が明らかとなっている。そこで、増殖に使われた基質と生成した溶存有機物の間のC:N比の関係を調べることにより、海洋細菌が生成する溶存有機物のC:N比をコントロールするメカニズムの解明を試みた。基質のC:N比については、一定濃度のグルコースに対し、硝酸イオンの添加量を変えることにより4段階に調整した。Pに関しては一定濃度(C:P比が一定)を保った。これらの基質が入った人工海水に対し、束京湾表層から採取した海水を濾過後、添加し、現場海洋細菌の培養を行った。培養実験開始後約2週間の間に、7回サンプリングを行い、グルコースと硝酸イオンが消費される過程で生成・蓄積する溶存有機物のC:N比の特徴を調べることを試みた。現在、これらの培養実験試料に対し、有機炭素及び窒素濃度の測定を進めている段階である。
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