昨年度までの本学研究練習船の航海で採取した亜熱帯海域の海水試料について、高感度分析によるリン酸塩および硝酸塩の鉛直微細分布を測定した。リン酸塩については本研究で開発した長光路キャピラリーフローセル(LWCC=Liquid waveguide capillary flow cell)と空気分節型連続フロー比色分析システム(いわゆるオートアナライザー)を組み合わせたシステムによって定量した。また硝酸塩(+亜硝酸塩)については化学発光法による分析を行った。この結果2.5〜5m間隔の高密度な採水によるリン酸塩および硝酸塩の微細分布を、はじめて同時に計測したデータを得ることができた。表層の混合層レベルの濃度から栄養塩濃度が深度と共に上昇しはじめる深度(濃度躍層の上端)を硝酸塩(+亜硝酸塩)とリン酸塩で比較したところ、リン酸塩の方が約5〜15m程浅くなる例が見いだされた。昨年1〜2月に南極海で同様の高密度採水を実施した結果でも、リン酸塩の方が硝酸塩より濃度躍層の上端が浅くなる結果が得られた。従ってこの現象は海洋の有光層での一般的な現象である可能性が高く、海洋表層における生元素循環を理解する上で極めて重要な発見であると考えている。なお、長光路キャピラリーフローセルを用いた高感度比色分析法については、最終的にリン酸塩(SRP)、硝酸塩(+亜硝酸塩)、アンモニウム塩濃度の3項目の測定が可能となった。これらの高感度分析は鉛直微細分布の計測だけでなく、航走中の栄養塩類の高感度連続モニターや、亜熱帯外洋水の船上インキュベーション実験などにも適用できた。これらの成果について、2003年9月の日本海洋学会秋季大会(長崎大学)で2件の研究発表を行った。
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