我々の最終的な研究目的は、気象学に基づいた、海域部でのCO_2交換量の測定方法を確立することである。そのため、2000年の夏季から定期的に、水平方向の一様性が保証されている京都大学防災研究所・大潟観測所の固定桟橋を利用して、バルク法と気象学的測定法(渦相関法、傾度法、スペクトル密度法)を使ってCO_2交換量の比較観測を実施してきた。本年度の観測は、2003年7月26日〜8月7日、9月20日〜30日に実施した。CO_2交換量は、3種類の気象学的測定の結果はよい一致を示し、気象学的測定法が海上でのCO_2交換量の測定に有効に機能することが確認できたが、バルク法による値より2桁大きいフラックス値であった。この差の原因は、バルク法に含まれている交換係数では短い時間でのフラックス値の変化を表すことができないことと関連しているように思えた。気象学的測定法で測定したCO_2交換量は、数日周期でイベント性の放出/吸収を示す傾向がある。もし、イベント性の放出/吸収が統計的に有意とみなせるだけの時間平均(例えば1ヵ月)を行えば、気象学的測定方法とバルク法によるCO_2交換量は矛盾しなくなる可能性がある。本年度の成果として、我々は、船舶観測に主流となる海域部でのCO_2交換量の測定には、バルク法に代って、船舶振動の影響を受けない傾度法、あるいは、スペクトル密度法を使用することを提言する。
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