地球を温暖化に導く恐れのあるCO_2濃度が大気中で着実に増加している。大気中に放出されるCO_2の約6割が大気中に蓄積され、残りの約4割が海洋と植物に吸収されていることになっているが、CO_2の吸収に果たす海洋と植物の役割は確定していない。現在、陸域部と海域部において精力的な研究が展開されているが、得られた結果の多様性、その変動の大きさを考えると、現時点のデータは、質、量共に不十分である。特に、海域部における質の良いデータが不足している。海洋上でのCO_2交換量の測定は、船舶を利用してバルク法で推定する場合が多い。しかし、バルク法に含まれているガス交換係数は、不確定な仮定に基づいたものであり、使用する式によって値が異なっている。測定原理が明確な方法で海洋上でのCO_2交換量を確定することが要請されている。 我々の最終的な研究目的は、気象学に基づいた、海域部でのCO_2交換量の測定方法を確立することである。そのため、2000年の夏季から定期的に、水平方向の一様性が保証されている京都大学防災研究所・大潟観測所の固定桟橋を利用して、バルク法と気象学的測定法(渦相関法、傾度法、スペクトル密度法)を使ってCO_2交換量の比較観測を実施してきた。バルク法以外の3種類の測定方法の結果はよい一致を示し、気象学的測定法が海上でのCO_2交換量の測定に有効に機能することがわかった。本研究の成果として、我々は、船舶観測に主流となる海域部でのCO_2交換量の測定には、バルク法に代って、船舶振動の影響を受けない傾度法、あるいは、スペクトル密度法を使用することを提言する。
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