主として銀河の中心から飛来してくる高エネルギー陽子が空気成分と衝突して、種々の放射性核種が生成し、地表に降下してくる。それらの放射性核種の中でも、半減期が1年以内の核種を用いて、種々の成分が大気から地表に降下する機構を解明しようというものである。また大気中には地表から放出されたラドンガスの壊変生成物が存在するので、それらの放射性核種も同様に利用できる。 鉛-212を用いて直接的に乾式降下量を測定した。半減期10時間と短いので、3日間雨が降らなければ雨の影響を無視でき、乾式降下量のみが測定できる。はじめに水盤、乾燥ろ紙、ろ紙の衝立、その衝立の下のろ紙と人工表面への降下量を測定した。その結果ろ紙の衝立にもっともよく降下し、衝突による降下が影響が大きいことがわかった。つぎに苔の地面、すすきの原、クローバーの牧草地など種々の草原への降下量を測定した。その結果はやはり草丈の高い草原に多く降下することがわかった。 森林への降下量はその測定が大変困難であった。樹形が大きいので、平均的存在量を求めるのに時間がかかり、鉛-212では不可能で、半減期53日のベリリウム-7を用いた。一本の杉の木を丸ごと採取して、各部分を測定し、林床の土壌についても深さ20cmまで測定した。さらに林内および林外に降る雨を採取し測定した。樹冠でどの程度滞留し、蒸発するか明らかにするためである。それらのデータを解析し、杉林に降下する乾式降下量はほぼ雨による降下量に等しいことがわかった。 上述のような森林に関する基礎的なデータ(面積あたりの葉量や核種の分布)があれば、一部を採取して測定すれば、降下量がわかる。鉛-212を用いてマテバシイ林への乾式降下量を直接測定した。今後は硫黄-35(半減期88日)を用いてエアロゾルや亜硫酸ガスなどの硫黄化合物の挙動を解明する予定である。
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