研究概要 |
今年度は,これまでに東シナ海や大村湾で取得した水中分光方反射,クロロフィルa(CHL),懸濁物質(SS),有色溶存有機物質(CDOM)のデータを処理すると共に,これらの二海域の他に有明海も含めてデータを取得した.また,富山湾での衛星データの検証を行った。 九州近辺の三海域の光学特性を比較したところ,三海域をあわせるとCHLとSS, CDOMの間に有意な相関があるが,それぞれの海域内ではその割合が均一でないことが明らかとなった。また現在の経験的な海色リモートセンシング水中アルゴリズムで,CHLに関しては,全海域を通せば比較的良い対応が見られたが,個別の海域ではまだその推定が充分でないことが明らかとなった。またSS, CDOMに関しては誤差が大きかった。有明海のCHLに関しては,既存の衛星アルゴリズムを利用することによって赤潮の分布と時間変動がある程度示すことができた。 富山湾での既存の衛星アルゴリズムの検証では,大気補正による誤差によって沿岸の河川水の影響を特に受けた海域でCHLが過大評価されることが明らかとなったが,SSの散乱等を考慮した水中の光学過程のモデルと大気モデルの繰り返し計算を利用することによってその誤差が小さくなることが明らかとなった。ニューラルネットワークを用いた水中アルゴリズムを利用することによって,SSの分布は妥当と考えられたが,CDOMの分布は妥当ではなく,さらに研究が必要と考えられた。 東シナ海では,低塩分ほどCDOMが多いという関係があり,衛星リモートセンシングによってCDOMを推定することによって,長江起源の低塩分水の分布を明らかにできることがわかった。しかし季節的に,表層の塩分とCDOM割合が異なった。また大陸棚上の亜表層ではCDOMが多いことから,海底からのCDOMの供給がある可能性も明らかとなった。
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