環境中の水素、炭素同位体の動態解析を発展させるために試料処理技術について研究した。得られた結果は以下の通りである。 1.環境水試料中の低トリチウム濃度を測定するためにはそれらの試料を電解濃縮することが必要不可欠である。そのために、試料セルと標準セルを直列に接続して電解濃縮し、試料セルで電解後のトリチウム濃度等を測定すると共に標準セルで装置定数kまたは回収率Rを測定し、試料のトリチウム濃度を算出した。これら二つの方法は環境水中のトリチウム濃度を推定するのに等しく効果的であることが実証された。この結果は2001年つくば市で開催された第6回トリチウム科学技術に関する国際シンポジウムで発表した。 2.^<14>C試料の化学処理は多くの時間を要し、従来の方法では1週間に2つの試料を処理できるだけであった。そこで、この化学プロセスについてバナジウム触媒を活性化する装置、チリウムカーバイドを生成する装置およびアセチレンとベンゼンを合成する装置の3つに分割した。その結果、3つの工程を同時に運転するならば、1週間に4つの^<14>C試料を処理できるようになった。 3.近年、^<14>C年代は炭素同位体の分別補正および暦年代への較正をおこなうことが求められている。我々は木炭試料について幾つかの例を八戸工業大学紀要21巻、2002に報告した。 4.八戸地域で交通状況が異なる幾つかの場所に生育しているタンポポの葉の中の^<14>C濃度を調査し、タンポポの^<14>C濃度は局所的な交通条件に呼応していることを確認した。 5.本学のキャンパス内で2000年1月から2001年12月まで、一雨ごとに採取した降水中の水素安定同位体比、δDについて調査した。そして、δDの季節変化は温度効果、"やませ"の効果および降水の発達場所という3つの因子によって説明した。
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