平成13年度は、既存の野外観測データの整理((1))および人工的にマクロポアを形成したライシメータを用いた室内降雨実験((2))を行った。 (1)報告者が平成11-12年度に観測した農業地域における土壌水水質データの内、硝酸態窒素とその生成・分解に関連のあるデータの抽出整理を行った。その結果、大豆畑などに比して大麦畑、とうもろこし畑の地表面下20cm(根域下)の土壌水には高濃度の硝酸態窒素が含まれ、濃度は深さと共に減少するが地下水面に窒素が流出していることがわかった。得られた濃度プロファイルを既存の解析モデルにフィットして浸透パラメータの推定を行った結果、不飽和帯においても脱窒反応が典型的な飽和帯の10-100分の1程度の速度で起こっていることがわかった。モデルから推定された浸透速度は降水・蒸発量から推定される浸透速度より早くマクロポアによるすばやい水の浸透の影響が示唆された。 (2)風洞下に設置された細砂を充填したライシメータ(深さ60cm)内に直径2mmを中心とするマクロポアを人工的に形成し、塩素イオン、硝酸イオン、硫酸イオンをトレーサーとして5種の降水強度による降雨浸透実験を行った。マクロポアの無い媒体でも同じ実験を行い、結果を比較することによりマクロポアが水・物質の移動に及ぼす影響を明らかにすることが目的である。得られたデータの解析はまだ十分に行われていないが初期的な結果として次のようなことが認められた。水の動きにおいてはマクロポアがある場合には降水後深部でのすばやい圧力水頭の上昇が認められてマクロポアの影響が顕著であるのに対し、物質移動においてはマクロポアがある場合の方が物質濃度のより大きな希釈か認められるものの、浸透速度に大きな違いは認められなかった。
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