研究課題/領域番号 |
13680612
|
研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
野上 祐作 岡山理科大学, 理学部, 教授 (00172768)
|
研究分担者 |
吉良 尚平 岡山理科大学, 大学院・医歯学研究科, 教授 (50033212)
宮永 政光 岡山理科大学, 理学部, 助手 (70319937)
|
キーワード | 水環境 / 児島湖 / コイ / 多環芳香族炭化水素 / 濃縮係数 |
研究概要 |
先に、「環境ホルモン」の疑いのあるベンゾ[a]ピレンなどの多環芳香族炭化水素類(PAHs)は、水環境中に輸送されると、その疎水性のため、共存する懸濁物質(SS)に吸着されやすいことについて報告した。PAHsは、SSとともにやがて凝縮・沈降し、水底堆積物中に移行すると考えられる。その過程において、PAHsの一部は、水環境中に棲息する魚類の体内に移行すると考えられる。今回、岡山県の南部に位置し、汚濁の進行している児島湖において、約1年間にわたって定期的に捕獲されたコイを中心に、その鰓、肝臓、脂肪の各組織中に蓄積されているPAHs量の把握を行った。 ベンゾ[a]ピレンの平均レベルは、鰓組織に0.41ng/g(wet)、肝臓組織に0.11ng/g(wet)、脂肪組織に.0.05ng/g(wet)であり、環境水と直接接触する鰓への蓄積が最も多いことが明らかになった。また、フルオランテンなどのPAHsも鰓への蓄積が多かった。このことは、常時、口に取り込む環境水中のSS等に吸着されているPAHsの影響のほうが、食べ物による影響よりも大きいことを示唆する。なお、フルオランテンだけは、特異的に脂肪組織への蓄積量が多く、その挙動が他のPAHsと異なっていた。 児島湖のコイの肝臓へのベンゾ[a]ピレンの蓄積量を、児島湖に比べSS濃度の低い旭川、吉井川などのコイと比較すると、4〜10倍程度多く、水環境中のPAHsの汚染評価の一つの指標となることが示唆された。 また、数は少ないが、児島湖のフナ、ボラ、ブラックバスについても同様の調査を行ったが、ボラを除いてほぼ同様の結果が得られた。ボラについては、フルオランテンなど一部のPAHsの蓄積量が鰓よりも肝臓において多く、食性の違いなどの影響が示唆された。この点に関しては、今後、例数を増やし検討する予定である。
|