1.天然に風化した黒雲母劈開面の表面分析を行い、硫酸酸性溶液と反応(酸溶解)させた黒雲母の表面変化と比較することで、風化メカニズムについて調べた。その結果、酸溶解過程では、鉱物表面に二酸化ケイ素(SiO_2・nH_2O)に富む表面溶脱層が生成することが分かった。一方天然風化黒雲母表面では、K、Fe、Mgが減少し、相対的にSi、Alの濃度が増加していた。溶存Alを含む微酸性〜中性領域の溶液との反応(天然風化)では、ケイ酸塩鉱物からのAlの溶出の抑制や溶液から鉱物表面への水酸化アルミニウムの沈着が考えられ、これが天然風化黒雲母で、Alの表面濃度が高くなる原因と推定された。 2.ケイ酸塩鉱物の酸溶解反応メカニズムのpH依存性を明らかにするため、斜長石粉末試料を濃度の異なる硫酸酸性溶液と反応させ、その表面変化を調べた。その結果、強酸性(5×10^<-2>mol 1^<-1>H_2SO_4)での溶解では、黒雲母と同様に、二酸化ケイ素に富む表面溶脱層が生成することが分かった。酸濃度の低い条件(5×10^<-4>mol1_<-1>H_2SO_4)でも、同様に表面溶脱層の生成が確認されたが、その厚さは酸濃度の低下とともに薄くなることが示唆された。一方、5×10^<-6>mol1^<-1>H_2SO_4との反応では、斜長石のAl表面濃度が増加した。これは微酸性溶液との反応において、鉱物表面にAlを含む水酸化物層が生成するためと考えられた。 3.本研究から、ケイ酸塩鉱物の風化(酸溶解)では、鉱物表面に二酸化ケイ素に富む表面溶脱層が生成するが、その厚さは風化環境により変化し、pHが低下すると厚くなることが明かとなった。また、酸濃度が低く中性に近い条件では、Alの表面濃縮が生じることが分かった。従って、ケイ酸塩鉱物の風化メカニズムは反応溶液のpHにより変化し、鉱物の表面分析からその鉱物の風化環境について推定できる可能性が示唆された。
|