研究概要 |
昨年度は、まず研究の土台となるマウス(B6D2F1)初期卵割胚の染色体標本作製法の開発に取り組み、成功率の高い方法を確立した。今年度はこの方法を用いて放射線を照射した精子に由来する初期胚(1細胞期胚、4細胞期胚)の染色体分析に取り組んだ。研究実績の概要は以下の通りである。 1.研究方法:雄マウスにγ線(2,4Gy)を照射した後に精巣上体から精子を採取し、過排卵処理により正常雌から採取した卵子と体外受精させた。漸進固定空気乾燥法を用いて1細胞期胚および4細胞期胚の染色体標本を作製した。通常のギムザ染色標本で染色体分析した後、Cバンド分染法によりさらに詳細な解析を行った。 2.1細胞期胚の染色体分析:対照群503胚、2Gy照射群317胚、4Gy照射群350胚の合計1,170胚を染色体分析し、胚発生のスタート時点(受精卵)での染色体異常の種類と頻度をまず調査した。異数性胚は放射線照射によって増加しなかったが、構造的染色体異常をもつ胚は線量依存的に顕著な増加を示した。照射群で観察された異常で最も多かったのは切断型異常であったが(約60%)、二動原体染色体も比較的高い頻度で出現した(約25%)。 3.4細胞期胚の染色体分析:今年度はまず非照射対照群で染色体分析を行った。受精卵の97%が4細胞の分裂中期に到達し、そのうち80〜90%において4割球細胞すべての染色体分析が可能であった。200胚の分析の結果、染色体異常は、数的モザイク5%、構造異常モザイク26%で、モザイク型でない染色体異常は1例も観察されなかった。 4.卵割胚染色体のFISH染色法の開発:マウス動原体に特異的なDNAプローブを用いたFISH染色には成功したが、テロメアのFISH染色にはまだ成功しておらず、現在検討中である。 次年度には4細胞期胚(照射群)の染色体分析を続行し、2細胞期胚の調査も行う予定である。
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