研究概要 |
昨年度までの未着床胚(1細胞胚〜胚盤胞)の調査に引き続き、今年度はγ線照射(2,4Gy)マウス精子由来の初期着床胚(10-11日齢胎仔)および後期着床胚(16-17日齢胎仔)の発生学的、細胞遺伝学的調査を行い、未着床胚で観察された染色体異常が着床胚にどの程度残存し、発生異常とどう関連するのかを検討した。 1.初期着床胚:対照群9頭、4Gy群12頭の母獣を調査した。着床前死亡胚の出現率は対照群と比較して増加傾向を示し、また、着床後の死亡胚は照射群で有意に増加した。着床後死亡胚の大部分は着床直後に死亡した退化受胎産物で、4細胞胚で観察された染色体異常胚出現率にほぼ等しいことから、大部分の染色体異常胚は着床直後に死亡すると推定された。 上述の発生学的調査と並行して生存胎仔の染色体分析を行った(対照群:32胎仔、818細胞;照射群:53胎仔、1,422細胞)。その結果、対照群で1例の異数性胎仔が観察された以外、すべての胎仔が正常であり、染色体異常は生存胎仔に残存していないと分かった。 2.後期着床胚:対照群19頭、2Gy群13頭、4Gy群20頭の母獣の発生学的調査を行った。初期着床胚での調査と同様に、着床前死亡胚は照射群で増加傾向を示し、着床後死亡胚の増加は有意であった。発生異常をもつ生存胎仔の出現率は極めて低く、対照群と照射群の間で有意差はなかった。着床後死亡胚の出現率は初期着床胚での場合とほとんど同率で、後期になってから死亡胎仔が増加することはなかった。すなわち、ほとんどの染色体異常胚は着床後まもなく淘汰されてしまうということが後期着床胚の調査からも確かめられた。
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