| 研究概要 |
紫外線波長の違いによる皮膚癌誘発のリスクを評価するために、突然変異検出用トランスジェニックマウスの一種であるMutaマウスの背中に単色光紫外線を照射して、生体皮膚における突然変異誘発の線量依存性を解析し、皮膚に対する紫外線誘発突然変異の作用スペクトルを調べた。照射は岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所の共同利用施設である大型スペクトログラフを用いて行った。
(1)290nm,300nm,313nmの各単色光紫外線照射によりマウス皮膚表皮・真皮ともに線量依存的に突然変異の誘発が認められた。誘発効率は表皮のほうが真皮より高かった。280nmでは表皮のみで線量依存的に突然変異の誘発が認められた。これらの結果はUVB領域の紫外線が強い皮膚癌誘発能を持つことを裏付けている。
(2)334nm,365nmの各単色光紫外線では照射した線量範囲では目立った突然変異の誘発は認められなかった。これらの結果はUVA領域の紫外線による皮膚癌誘発効果はあまり高くないことを示すと思われるが、より多くの線量を照射して調べなければ正確な評価はまだできない。
(3)上記の実験で得られた生体皮膚における紫外線誘発突然変異の作用スペクトルは280〜290nmをピークとし313nmまで単調に下降する傾向を示した。280nmと313nmの効果の差はおおよそ100〜200倍程度と見積もられた。しかし、まだデータ不足で確実な作用スペクトルは得られていない。
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