研究概要 |
平成16年度は,春に岩手県久慈市などの火事跡に出かけ,これまでの調査により不明になっていた植物種を確定するために標本採集をおこなった.とくに夏の植生調査時期には花・果実とも終わってしまっているカヤツリグサ科の植物などの同定は,春季におこなわない限り不可能である.久慈市の火事跡の他には,仙台市や釜石市の火事跡でもカヤツリグサ科植物および数種類の春植物(スミレ類やアネモネ類など)の採集をおこない,これまで不明種だった植物の種名を確定した. 秋田県男鹿市寒風山における2001年4月の焼失地,岩手県久慈市小袖における1983年4月の焼失地,および宮城県仙台市泉区における1983年4月の焼失地で,それぞれ植生調査を実施した.寒風山は焼失前の植生がススキ草原だったので,火事の影響はほとんどなく,3年しか経過していないにもかかわらずもとの植生と同様の植生に再生していた.久慈と仙台の火事跡は,コナラなどを主体とする落葉樹林が焼失した場所で,約20年を経過した現在は,焼失前の落葉樹林に近い景観の森林群落に再生していた. また,夏からは本研究課題に関する2報目の論文執筆を開始し,2005年2月には植生学会誌に受理された.久慈市の火事跡の植生遷移を明らかにしたもので,学会誌の発行に先立ち,科研費報告書にも同じ内容の原稿を掲載した.
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