研究概要 |
生物を利用した土壌の環境評価方法を確立するため,藻類群集と微生物群集を土壌の物理科学的要因と関連させて研究を行った。土壌は,鳥類営巣地、コケ群落、裸地および生活圏(観測隊員の日常的活動範囲)において採取した。 生活圏ではTNが裸地土壌と同等であったのに対し、TCが高く、C/N比も12.6〜57.4と明らかに高かった。生活圏には観測隊によって炭素含有率が高い物質が持ち込まれ、それらが土壌中に蓄積し、C/N比を高めたものと推察された。EB法による細菌数に占める希釈平板法による細菌数の割合(細菌CFU率)は他の地点ではほとんど1%以下であったのに対し、生活圏では平均3%(最高9%)と高いことから、土壌細菌群の増殖能力が高まっている、もしくは増殖能力の高い細菌群が多いものと推察された。以上の結果から、C/N比および細菌CFU率は、南極における人間活動の土壌環境への影響を評価する際の指標となり得ると考えられた。 土壌藻類に関しては,生活圏の3地点からは藍藻の出現種が少ない傾向があった。緑藻Chlorella vulgarisと未同定の糸状緑藻は昭和基地内の排水口付近,小便所付近からのみ出現し,鳥類営巣地の富栄養な土壌から出現するPrasiola crispaは基地の排水溝付近から出現した。藻類培養株を生理学的な実験に供するため,主に生活圏の富栄養な土壌に出現する種類の無菌化を寒天平板希釈法と抗生物質を用いて試みた。これまでに分析した土壌の物理化学的な要因では,生活圏の3地点に共通して見られる特徴は認められないが,土壌藻類群集,細菌群集からみた場合,これらの地点の土壌環境は人為活動によって変化していることが示唆され,土壌藻類では,C. vulgaris, P. crispaが人為的影響で富栄養化した土壌から出現する傾向が明となった。
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