研究概要 |
本年度は以下の研究を行った. (1)酵母の代謝熱を利用した気体のバイオアッセイ 酵母の増殖サーモグラムから,増殖を特徴づけるパラメータである増殖速度定数と増殖遅延時間を決定した.各ガス圧力下で決定したこれらのパラメータを使用して酵母の増殖を完全に停止させるのに必要な最小圧力を示す最小増殖阻止圧力(Minimum Inhibitory Pressure, MIP)を7種類の気体について決定した.この方法で求めた空気のMIPは,増殖速度定数を利用すると0.83MPa,増殖遅延時間では0.87MPaと,非常に低い圧力であることがわかった.これは酸素の強い増殖阻害能によるものであろう.これに対し,窒素のMIPは,20MPa以上と大きく,阻害能は低かった.しかし,圧力のみで増殖を完全に阻止するには約50MPa必要であるため,窒素にも気体の性質による増殖阻害能がることがわかった.これも,大過剰に溶け込んだ気体の影響によるものだと考えられる.この他,NOxの一種として知られているが常圧の溶解度ではほとんど増殖阻害能をもたない亜酸化窒素のMIPも評価している.気体の増殖阻害能を定量化することは,有害気体のバイオアッセイを行う上で1つの有力な指標となることが分かった. (2)様々な微生物を用いた農薬(水圏汚染物質)のバイオアッセイ 昨年度の研究成果として報告した酵母を用いた農薬のバイオアッセイで,使用した12種類の農薬のうち,1mg/1以下の濃度でも十分検出可能なものは4種類であった.そこで,検出可能な農薬を増やすため,農薬の影響を大きく受けると予想される植物病原菌(青枯病菌,イチゴ炭そ病菌,トマト根腐れ萎長病菌)を用いて代謝熱測定を行った.その結果,酵母に対して増殖阻害効果の低い農薬でも,これらの植物病原菌を使用すると検出が可能となりバイオアッセイに利用できることが分かった.
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