研究課題/領域番号 |
13680630
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
環境影響評価(含放射線生物学)
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
大渡 伸 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教授 (80128165)
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研究分担者 |
鳥山 寛 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教授 (00108359)
熊取 厚志 長崎大学, 熱帯医学研究所, 講師 (60244092)
藤巻 康教 長崎大学, 熱帯医学研究所, 講師 (10209083)
金田 英子 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助手 (10253626)
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研究期間 (年度) |
2001 – 2002
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キーワード | 太陽紫外線 / 免疫抑制 / 疾病感染 / マンソン住血吸虫症 / DDYマウス / 影響評価 |
研究概要 |
本研究では、1)太陽紫外線による生体の免疫系に対する影響、2)紫外線影響による生体免疫能変化と疾病感染との関係について実験を行い、3)紫外線の疾病感染に対する影響評価を検討した。疾病感染としてマンソン住血吸虫症の感染実験をマウスに対し行った。 [結果]人工紫外線照射:照射線量(UV-B:400J/m^2)では、非照射群と比較し体内侵入幼虫数および回収成虫数は、有意に多く(P<0.01)、紫外線照射によるマンソン住血吸虫症の増悪作用が認められた。 太陽紫外線暴露:I.人工紫外線と同線量(400J/m^2)の太陽光曝露では、非照射群と比較し有意差は認められなかった。II.太陽赤外線による体温上昇抑制のためアイスパックを併置して、800J/m^2の太陽光暴露を行った結果:(1)CD4/8が曝露後7日目に最低値となり、非暴露群と比較し有意差が認められた。しかし、2週間後には回復した。(2)体内侵入感染幼虫数は、非暴露群と比較し有意差が認められた(P<0.05)。(3)回収成虫数では、非暴露群と比較し有意差は認められなかった。III.更に、1600J/m^2の太陽紫外線暴露を試みたが、マウスは日射病による高体温障害が生じたので、感染実験は断念した。 [考察]I.人工紫外線に比べ、太陽紫外線の暴露線量が高かった。不連続波の人工紫外線と比較し、作用効果が低い波長のエネルギーが連続波の太陽光に含まれるため、総エネルギー量が高いと考えられる。II.太陽紫外線による免疫系に対する影響が認められた。太陽紫外線影響による生体免疫能変化と疾病感染との関係については、感染幼虫数の高い体内侵入率から免疫能変化による生体防御能の低下が示唆された。III.回収成虫数に於いては、太陽紫外線暴露による影響は低かった。その原因として、アイスパック併置の簡易冷却法では、障害を生じない程度の体温上昇が生じる。発熱は免疫能促進作用が認められ、体温上昇の機序は異なるが、太陽光の赤外線温熱作用で誘起された高体温による免疫能促進効果が考えられる。上記暴露線量は15〜20分間(夏季,直射日光下)の被爆量である。発汗機能を有し、体重がマウスの1000倍であるヒトでは体温上昇は僅かで、高体温による病態の増悪抑制効果は望めない。 本研究では、800J/m^2の太陽光暴露で、回収成虫数で有意差は無かったが、太陽紫外線は生体防御能の低下を誘導し、感染幼虫数の高い侵入率が認められた。今後の研究課題は、太陽光暴露時に体温コントロール装置を用い、生体内で成育する住血吸虫に対する、高線量(800J/m^2以上)太陽光曝露の影響を明らかにし、ヒトへの紫外線病態増悪作用および赤外線の温熱効果について、更に詳細な検討が必要である。
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