研究概要 |
1.種々の液性を有する温泉源泉、浴槽および露天風呂の水を採取し、塩素添加による泉質の変化およびレジオネラの検出実験を行った。 (1)塩素殺菌を施している浴槽水の化学成分変化の1例として源泉の泉質がCa・Na-HCO_3であったのが浴槽ではCa・Na-SO_4に変化し、pHも9.26から7.68へとアルカリ性泉から中性泉に大きく変化しているものがみられた。このことは塩素殺菌および化学物質の浴槽水への添加は温泉のもつ本来の性質を著しく変えるものであることが明かとなった。 (2)L.pneumophilaは26源泉から2箇所、18浴槽から8箇所、9露天風呂から5箇所検出された。血清型では4,5型が多く、これまでクーリングクワーで検出されてきた1型が少ない事は、汚染源と考えられる周辺土壌からの本菌との関係も含め興味深い結果であった。温泉水とクーリングタワーは温度、電導度に大きな違いがあり、このことが生息している本菌の血清型の違いに関係しているものと考えられた。また今回常法に従って詳細に実験した源泉周辺土壌からは本菌は検出されなかった。 2.源泉のpH,温度および電導度を変化させた試料水にL.pneumophilaを添加し、生育への影響および生きているが培養不能な状態(Viable but Nonculturable:VNC)への移行性について検討した。 (1)本菌はpHの低い状態ではほぼ完全にまた迅速に死滅し、pHの高い状態では生育抑制が起きている事が明らかとなった。またpH5ではVNCに移行していることが示唆された。 (2)pH6.0〜8.2、温度25℃〜42℃の範囲では生菌数およびコロニー形成数が安定していたことから本菌の育成に適しているものと考えられた。 (3)これまで45℃の温泉では本菌は生息不能と考えられていたが、VNCへ移行することで生息可能であることが示唆された。また温度が50℃以上では速やかに死滅する事が分かった。 (4)本菌の生育にはある程度の電導度(電解質)が必要であることが示唆された。
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