1.種々の液性を有する温泉源泉、浴槽および露天風呂の水を採取し、塩素添加による泉質の変化およびレジオネラの検出実験を行った。 2.源泉のpHおよび温度を変化させた試料水にL.pneumophilaを添加し、生育への影響および生きてはいるが培養不能な状態(VNC)への移行性について検討した。 (1)本菌はpHの低い状態では完全に死滅し、pHの高い状態では生育抑制が起こっていた。pH5ではVNCに移行していることが示唆された。(2)pH6.0〜8.2、温度25℃〜42℃の範囲では生菌数およびコロニー形成数が安定していた。(3)45℃の温泉では生息不能と考えられていたが、VNCへ移行することで生息可能であることが示唆された。温度が50℃以上では速やかに死滅した。 3.L.pneumophilaおよびAcanthamoebaに対する殺菌効果について検討した。 (1)残留塩素濃度0.4ppmでは本菌添加後1分以上生息していた。1.0ppmでは本菌を添加後直ちに死滅した。(2)残留塩素濃度5ppm以上ではAcanthamoebaに貧食された本菌は検出されなかった。しかし、この濃度ではAcanthamoebaは約40%生存していた。従ってAcanthamoebaがシスト化して生存している可能性が示唆された。 4.温泉でのレジオネラ属菌の感染源および汚染経路の解明について検討した。 (1)温泉および温泉周辺土壌から検出されたL.pneumophilaの中で血清群が一致していたものについてRAPD法を用いて菌の同定を行ったが遺伝学的な一致は見られなかった。(2)循環ろ過装置のろ材および浴槽から検出されたL.pneumophilaついて血清群の同一性に関わらずRAPD法を試みた。その結果、異なる血清群であっても同一のバンドパターンが認められた。この結果は汚染経路を明らかにする糸口となると考えられることから、さらにPFGE法を用いてこれまでの土壌を含め詳細に検討を行っている。
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