クリーン開発メカニズム(CDM)の制度設計における最大の課題は取引コストやリスクの低減であり、短中期的には政府の役割が大きいとされる。そのため、本研究では、欧州(オランダ、ドイツ、スウェーデン)、ロシア、中国、インドネシアなどを対象に現地調査や文献調査などによつて、前述の買い上げ制度および債務カーボン・スワップの可能性を検討した。 その結果、オランダはクレジット買い上げ制度(ERUPT、CERUPT)、世界銀行はクレジットの仲介事業(PCF)を拡充しつつある。日本においても同様の制度の構築が、企業へのインセンティブ賦与策として必要という意見もあり、中身はまだ不十分ではあるものの、経済産業省、日本国際協力銀行などが具体的な制度設計に関して提案を行っている。 しかし、ERUPT、CERUPT、世銀PCFはそれぞれ異なった複雑かつ未完成な運用ルールを持つ制度であり、数年の運用期間を経て、様々な課題が明らかになりつつある。実際に、オランダ政府はCERUPTの打ち切りをほぼ決める一方で、世銀グループのような国際開発銀行および民間銀行とのカーボン・クレジットの売買契約を進めている。すなわち自らが国際競争入札を実施するよりも、少なくともCDMに関しては、国際機関や民間銀行にクレジットの調達を任せる方針に転換しつつある。 したがって、日本は、このような先行事例を分析し、日本にとってもっとも効果的かつ設計可能な制度を検討するべきであり、本研究は、具体的な制度設計を伴った分析をインタビューおよび文献調査によって行っている。
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