京都メカニズム、特に共同実施(Joint Implementation : JI)およびクリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism : CDM)からのカーボン・クレジット売買に関する国際制度として実際に機能しているのは、世界銀行によるProto-type Carbon Fund(世銀PCF)およびオランダ政府によるEmission Reduction Units Purchase Tender(ERUPT)/Certified Emission Reduction Units Purchase Tender(CERUPT)のみと言っても過言ではない。しかし、ERUPT、CERUPT、世銀PCFはそれぞれ異なった複雑かつ未完成な運用ルールを持つ制度であり、数年の運用期間を経て、様々な課題が明らかになりつつある。本研究では、まず世界銀行およびオランダの関係者に対して行ったインタビューと文献調査をもとに、先行事例が国際社会および日本に対して持つ政策的含意を検討した。次に、それらをもとに、1)アジアにおけるカーボン・ファンドの設立、2)ODAなどの公的資金のCDMに対する使用方法、3)途上国が持つ日本に対して持つ債務とCDMプロジェクトによるカーボン・クレジットとの交換(債務カーボン・スワップ)の可能性、4)地球温暖化対策国際環境協力プロジェクトの評価方法の開発、などの点を中心に、日本やアジア地域における具体的な制度設計のあり方について先行事例の成功および失敗を指摘しながら提言を行った。
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