研究概要 |
津久井湖表水層における真正細菌群集構造の季節変動の昨年度の結果を基に,微生物生態系をより詳細に解析するための室内実験を行った. 1.実湖沼で発生したアオコの溶解過程での微生物群集構造の解明 すでに季節変動の特徴を報告済みである津久井湖で回収したアオコを用い,室内培養(アオコの溶解)に伴う溶存態有機物と真正細菌群集構造の変動を,EEMS (Excitation Emission Matrix Spectroscopy)とPCR-DGGE (Polymerase Chain Reaction-Denaturing Gradient Gel Electrophoresis)によって解析し,遷移する群集構造と溶存態有機物の特性の変化との関係を評価した.培養開始5日後までにアオコの急速な溶解と無機化が生じ,フミン様物質やタンパク様物質などが新たに放出されることが観察された.フミン様物質の単光強度は,放出されてから数日後には減衰することが観察された.γ-Proteobacteria, CFBグループ,α-Proteobacteriaなどに近縁な配列を有する細菌がアオコの溶解に関与している可能性が示された. 2.純粋培養藍藻と湖水中真正細菌群との相互関係の検討 実験室内にて大量に純粋培養した藍藻Microcystis aeruginosaを,津久井湖表層水から大型のプランクトン類を取り除いたもの,および滅菌したものの二種類に入れて培養することで,溶藻現象や有機物の生成に関わる現象をより明確に観察した.湖水由来の真正細菌群が存在することで,溶存有機物に違いが認められた.また,1の実験で認められたような藍藻の溶解は認められなかったが,細胞数は明確に減少した.その結果,真正細菌群が共存する系ではEEM上のフミン様物質のピークの増加とその後の減衰が観察されたのに対し,滅菌湖水の系ではそのような変動は認められなかった.
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