研究概要 |
本年度は我が国および外国で行われてきた環境-経済統合勘定に関する理論的研究の文献サベイを行い,その研究動向を把握した。環境-経済統合勘定の理論的研究は,実用性を指向したものが極めて少ないため,本年度は実際にデータ収集可能な形で理論的研究を行った。本研究では環境-経済統合勘定を最適経済成長論の観点から捉えるため、特に環境ストックのシャドープライスの解釈とその推計可能性が重要となり、この点に重点を置いて研究を行った。 モデルの構造は生態系に代表される環境ストック,大気,水などの環境フローを明示化し,割引された家計効用の現在価値総和を最大化するような経済成長経路を考察した。その経路上で環境-経済の相互依存関係を,環境-経済統合勘定として導出できた。そして現在価値ハミルトニアンが真の国民福祉指標を与えると同時に,それが非減少になることをもって,持続的発展と解釈できることが判明した。 次に必要とされるデータの収集を行った。データについては基本的には官公庁等により公表されているデータを用いたが,補足が必要なデータ,特に環境ストックの存在量,環境維持費用などは公表例が極めて少なかったため,ヒアリングも若干行った。そして本年度は農業,林業に中心を置いた形で,実際に環境-経済統合勘定の推計を行った。 以上の成果は土木学会,日本地域学会,国際地域学会などで発表した。
|