研究概要 |
畜産・水産廃棄物としてコラーゲンを多く含む骨、皮、魚鱗に着目し、それら廃棄物の機能性食品素材への変換を試みた。最初に、市販酵素剤の中からコラーゲンペプチド製造に適した酵素を選択した。選択したBacillus sp.由来のプロテアーゼを用いて製造したペプチドについて、抗ラジカル活性およびアンジオテンシンI変換酵素(ACE)阻害活性を測定した結果、すべてのペプチドが優れた活性を示した。その中で、脂質をほとんど含有しない魚鱗を材料として選択し、酵素的加水分解物(コラーゲンペプチド)を製造して詳細に検討した。0.6N HCl溶液に浸漬する脱灰処理の後に酵素分解したところ、92%の分解率が得られ、製造したペプチド混合物のACE活性を50%阻害する濃度(IC_<50>)は0.57mg/mlであった。高血圧ラットを用いたin vivo評価を行った結果、300mg/kg-body weightのペプチド添加飼料を経口投与した群において、コラーゲンペプチドを投与しなかった対照群と比較して、有意に(p<0.05)血圧上昇抑制作用が認められた。そこで、Sephadex LH-20 (Ammersham Pharmasia Biotech、ゲルろ過)、UNO Q-1(BioRad、陰イオン交換)、Superdex Peptide HR 10/30 (Ammersham Pharmasia Biotech、ゲルろ過)、Sephasil Peptide C18 column (Ammersham Pharmasia Biotech、逆相)の4段階のカラム精製を行い、血圧上昇抑制作用を示すペプチドの構造を調べた。一連の精製操作により、4種類の精製ペプチドを得ることができ、各ペプチドのアミノ酸配列はGly-Tyr, Val-Tyr, Gly-Phe, Val-Ile-Tyrであることがわかった。精製したペプチドのACE阻害活性は精製前のペプチドと比較して5倍から20倍に向上し、中でもVal-Ile-TyrおよびVal-TyrのIC_<50>値はそれぞれ7.5μMおよび16μMと、これまで報告されているACE阻害ペプチドと比較して遜色のない高い活性を有していた。また、ACE阻害ペプチドのカルボキシ末端には疎水性アミノ酸が多いことが知られているが、今回、魚鱗から製造し精製したコラーゲンペプチドのカルボキシ末端もまた、チロシン(Tyr)やフェニルアラニン(Phe)といった疎水性アミノ酸であった。
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