研究概要 |
平成14年度は、環境省などが公開している自然環境情報を利用しつつ、兵庫県県民生活部、兵庫県農林水産部、神戸市などがこれまで取りまとめてきた野生哺乳類と「有害鳥獣」行政に関わる農林業被害情報の磁気情報化を進め、解析を試みた。また但馬、丹波、および六甲山系をモデル地域と捉え、哺乳類の活動情報、および、空間分布に留意して、そこで発生している農林業被害状況の情報を昨年度に引き続き収集した。現在は、兵庫県県民生活部、兵庫県農林水産部、神戸市農林水産部と、兵庫県全域を対象としたよりシステマティックな情報集積法について検討している。 これらの磁気化した情報は自然・環境科学研究所、生態研究部門に集約し、その一部を用いてツキノワグマの近畿・中国地方での潜在的生息適地分布を推定した(坂田・三谷,2002)。さらに、兵庫県域のニホンジカ個体群の狩猟方法による推移モデルを立て、地域によるシカ密度と農業被害の関係を検討し、結果を印刷公表した(坂田ほか,2002)。 また、平成14年6月、および7月に兵庫県春日町と村岡町で捕殺されたツキノワグマの死体を回収し、解剖して組織を回収すると共にミトコンドリアDNAを採集する機会を得た(横山ほか,2002)。これは、本研究で行うクマの潜在生息適地と個体の拡散を考える上で、重要な情報を与える。 これらの成果は論文として公表したばかりでなく、兵庫県、および神戸市の鳥獣害行政に実地に役立ち、特定鳥獣保護管理計画、およびイノシシ餌付け禁止条例の形で役立っている。
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