本研究では循環型杜会の実現に向けて情報技術(IT)が果たす役割について研究した。従来は、廃棄物再生や処理などの技術面での工学的工夫が多く提案されてきたが、循環型社会が形成されるためには経済の仕組みとしての工夫が必要である。 本年度では循環型社会の実現に向けて情報技術が果たす役割について、環境経済学の観点から検討した。経済活動における情報の役割としては不確実性のもとでの意思決定支援、リスク軽減・時間・空間のギャップの縮小などが考えられるが、まず経済の情報化、ソフト化の動向について経済構造変化の現状を把握し、次に環境保全の観点から廃棄物排出量、処理量、リサイクル率の変化と情報技術の関連を分析し、情報技術のどのような機能が環境効率の向上に寄与するのかについて検討した。 情報技術が生活の中に取り入れられ、双方向からの情報交換が可能になり、特に電子商取引における企業-個人間取引では購買行動を生産活動にフィードバックすることが可能になる。購買行動における情報の活用や、ライフスタイルの変化が廃棄物発生量に与える影響の検討として、一般廃棄物の排出関数の説明変数として、情報技術投資を採用した関数を用いて、東京都のマクロモデルによる政策シミュレーションを実行し、ITが廃棄物排出量削減に有効であることが示せた。 また、ゼロエミッショシのアプローチでは、循環を成立させるためには、廃棄物を処理するのではなく、むしろ副産物を資源として活用する技術の体系をつくり、それの産業化を指向していく必要があるとされる。複数の経済主体が相互に補い合い廃棄物を資源化し、グループ外部に放出する廃棄物を最小にすることが目標とされる。相互に補いあうためには、再資源化のための物量、情報流を検討することが重要であり、企業間電子商取引はこの場面でも重要な役割を果たすであろう。
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