研究概要 |
本研究では循環型社会の実現に向けて情報技術(IT)が果たす役割について研究した。循環型社会の形成には、技術面での工学的工夫とともに経済の仕組みの工夫が必要である。 本年度は簡単なリサイクル・モデルを構築し我が国リサイクル法が採用したEPR手法が与える影響を検討した。リサイクル法とは,「循環型社会形成推進基本法」と個別法(改正廃棄物処理法,資源有効利用促進法,食品リサイクル法,建設リサイクル法,グリーン購入法,自動車リサイクル法)であるが,使用済み製品の排出者としての消費者の役割に注目し,上記リサイクル法のうち,容器包装,家電,パーソナルコンピュータ(以下「パソコン」),自動車の4種類の製品グループを考察対象とした。これら製品グループに関してリサイクル・モデルを用いて,生産者を環境影響低減設計へ向かわせる圧力としての政策手段として課税・補助金を想定し政策効果を検討した。 また同モデルを用いて消費者,生産者など社会を構成する主体がリサイクルに関した意思決定を行う際に製品情報が果たす役割についても考察した。具体的にはリサイクル過程への電子タグ導入の効果に関して,使用済み財の排出者である消費者の排出行動に注目し分析した。モデルにより,消費者の効用最大化,生産者の利潤最大化の条件より,各種価格を求め,情報が付加された財と付加されていない財に関して,価格比較分析を行い,情報財の価格が低下すれば,情報を付加した財の価格が,そうでない財の価格より相対的に低下するという興味深い結論を得た。すなわち、情報財の普及は情報付加財の価格低下を通じて循環型社会形成に有効であることが示せた。今回の分析に用いたリサイクル・モデルは,政策手段の評価に用いるには,まだまだ工夫の余地は大きいと考えるが,このモデルを手がかりとして,循環型社会形成に向けて、情報財の役割を活かした廃棄物行政について考えていきたい。
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