研究概要 |
本研究では循環型社会の実現に向けて情報技術(IT)が果たす役割について研究した。循環型社会の形成には,技術面での工学的工夫とともに経済の仕組みの工夫が必要である。 本年度は昨年度構築したリサイクル・モデルを用いて消費者,生産者など社会を構成する主体がリサイクルに関した意思決定を行う際に製品情報が果たす役割について考察した。具体的にはリサイクル過程への電子タグ導入の効果に関して,使用済み財の排出者である消費者の排出行動に注目し分析した。モデルにより,消費者の効用最大化,生産者の利潤最大化の条件より,各種価格を求め,情報が付加された財と付加されていない財に関して,価格比較分析を行い,情報財の価格が低下すれば,情報を付加した財の価格が,そうでない財の価格より相対的に低下するという興味深い結論を得た。すなわち、情報財の普及は情報付加財の価格低下を通じて循環型社会形成に有効であることが示せた。 社会システムが有効に機能するためには制度設計が重要である。価格,品質などの製品情報を指標とし社会の構成員は意思決定を行うのであるが,使用済み製品の回収・処理・処分といった定型的な判断は電子タグによる製品情報と通信ネットワークインフラに任せ,消費者・生産者は各自が情報を活用して製品のライスサイクル全般(製品の上流・下流)に配慮した意思決定が行えるように,情報が開示された社会の構築が循環型社会への一歩であろう。
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