3ケ年の研究の3年度目にあたる2003年度は、以下のような研究を行った。 (1)既存研究のサーベイ(継続) ラオスおよびタイにおける焼畑問題、森林資源の保全と利用などに関する既往の研究や関連する統計・調査等のサーベイランスを行った。 (2)ラオス中北部ルアンパバン県シングン郡における農村金融の実態調査(継続) 昨年度に引き続き、ラオス北部中北部ルアンパバン県シングン郡において、焼畑農民の生活安定化と現金収入、換金作物の導入などを目的とした農村貯蓄信用組合(オムサップ)の実態についての調査を行った。その結果、資金規模、貸し出し実績がともに成長を続け、換金作物の植え付け、家畜の飼育などに有効に利用され、結果として焼畑への過度の依存を低減していくうえで大きな効果があることが明らかとなった。また同時に、事業規模の拡大に伴って、村外からの預け入れや、村外者への貸付なとが行われるようになり、村落単位での協同的な活動から、ある地域をカバーする金融活動へと発展(変質)しつつある状況が明らかとなった。 (3)同ルアンパバン県ナムバック郡・ンゴイ郡における森林利用と社会経済状況に関する調査の実施 同地域において、20ケ村を対象として実態調査(アンケートおよびヒアリング)を行った。調査は、村落委員会のメンバーを対象とした村落調査と、各村内の10世帯を対象とした世帯調査である。主な調査項目は、家族構成・水田焼畑等の営農実態主要な換金作物の作付け状況と投下労働力等である。その後、調査票のチェックおよび補足的なヒアリングなどを行った。 村落結果から、村落全体の営農状況、貨幣経済の浸透状況、持続可能な経済発展のための課題を解析し、世帯調査からは、換金作物の作付け実態、投下労働力と生産物の売却による現金収入から見た生産性などを解析し、焼畑に代替しうる営農形態や米の確保手段について解析を行っている。 (5)これらの成果を解析し、複数の論文および最終報告書を作成中である。
|