本研究は、大規模な森林伐採や過度の焼畑によって森林の質の低下が著しいラオス北部地域を対象に、農村の社会経済的な状況を把握すると共に、焼畑を営む農民の森林利用の実態を明らかにすることを目的としている。本研究はラオス北部ルアンパバン県を対象とし、以下の4つの研究調査から構成されている。 1.30ケ村600世帯を対象としたヒアリングおよびアンケート 焼畑農民の生活実態が詳細に明らかとなるとともに、焼畑農村においても、徐々に貨幣経済が浸透し、換金作物や特用林産物の栽培・収穫が盛んとなり、農民の生計向上に役立ってきていることが明らかとなった。 2.食材を指標とした森林依存度調査 コメが不足し森林への依存が強い村落、森林への依存は強いがコメはかなり自給できている村落、コメが自給でき林への依存もさほど強くない村落、の3つのタイプがあることが明らかとなった。 3.民族間の森林認識の差異に関する調査 中地ラオ族(カム族)、高地ラオ族(モン族)ともに、焼畑サイクルを中心とした森林認識が行われていることがあきらかとなった。 4.土地利用政策に関する調査 土地利用の分配プロジェクトが、土地の効率的な利用を農民に促す効果が認められる一方、村落内での貧富の差の拡大、共同的な森林保全や管理のしくみが弱まる可能性が指摘できた。今後、森林再生の経済的・生活環境的な意義についての認識を村落内で共有することが重要であることが明らかとなった。
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