研究概要 |
海浜植物の持つ特性を利用・応用して,冬季の季節風(海から陸方向に吹く)によって海水浴場,砂浜海岸の砂が背後地の住宅,公園,道路などへ砂が吹き込む飛砂防止,海岸侵食の防止,海岸堤防と汀線まで間の砂浜を憩い,潤い,安らぎの空間として利用する方法がある.そのための方法として,ヒメシバを敷き詰めた海浜公園,あるいはハマヒルガオ,コウボウムギなどによる海浜花壇,などに海浜の植生を利用・活用する方法が考えられる. このような方法を考えるに当たって,富士川河口周辺の富士海岸,天竜川河口周辺の遠州海岸,熊野川河口周辺の7里御浜海岸を研究対象にして,どのような海浜植物種が,どの場所に,どのように生育繁茂しているかを詳しく現地海岸で調査した.調査資料に基づいて,次の(1)〜(5)について研究を行った.(1)海岸に共通して生育している植物種と海岸固有の植物種;(2)生育している植物種と,底質粒径,海面から植物生育地点の高さ,また汀線からの距離とのそれぞれの関係;(3)海浜の沿岸方向の幅と植生種の関係;(4)植物種の沿岸方向の分布;(5)植物種と波の強さ(波の遡上高,潮位)との関係 上述の(1)〜(5)の研究については,各学会の国際会議,研究報告,口頭で学会発表した.得られた主な研究成果は,つぎのようにまとめられる. (1)3海岸は,いずれも大河川の河口に広がる砂・砂利浜の海岸で,海岸堤防から汀線までの幅が沿岸方向に変化している.これらの海浜について,海岸堤防から植生帯先端までの幅と,植生種の種類および海岸堤防から汀線まで距離には,一定の関係が存在する. (2)静岡県の富士海岸と遠州海岸,および三重県の7里御浜海岸で多く生育が見られる植生種は,それぞれハマヒルガオ,メヒシバ,ハマゴウ;ハマヒルガオ,コウボウムギ,ケカモノハシ;ハマゴウ,ハマヒルガオ,ノイバラである. (3)静岡県の富士海岸と遠州海岸,および三重県の7里御浜海岸の3海岸に共通して多く生育がみられる植生種は,コウボウムギ,ハマヒルガオ,およびメヒシバである. (4)海浜植生が生育可能な平均海水面からの地盤高は,波の遡上高さ,入射波の波形勾配および汀線付近の浜勾配の関係で規定できる. (5)3海岸に共通して,海浜植生が生育可能な平均海水面からの地盤高を相対的な波の遡上高さと汀線勾配との関係で表示した.
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