研究概要 |
1)目的】スズ摂取のほとんどは食事からといわれているが、日本人の摂取量の詳細な報告がない。一般市民のスズバックグラウンド・曝露を知るため測定を意図した。成績】陰膳食物収集で得た試料を湿式灰化し、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)で測定した。40歳から77歳の成人男女501名(男性245名、女性256名)の1日スズ摂取量は測定下限値(ブランク値十3SD)以下が193名(38.5%)の多数であった。測定値は0〜5407μg/日の間に広く分布し、1mg以上の摂取者は40名(8%)であった。測定下限以下の測定値を平均2.5μgと仮定し計算した摂取量の幾何平均値,GM(幾何標準偏差値,GSD)は16.2(7.7)μg/日、中央値は11.6μg/日となり、男女差はみられなかった。結語】ICP・MSにより測定した食事からのスズ摂取量:は、これまで1〜4mg/日といわれている値より僅少値であった。 2)目的】誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP・MS)によるスズ測定の精度管理と食事からのスズ摂取量の再検討を意図した。方法と成績】スズ測定で使用する試薬の検出感度(Limited of Detection, LOD)への影響を検討し、スズ含有量:の少ない高純度酸の使用がLOD値を改善した。測定感度以下の対象試料は0件となり、LOD<0.1μg/日と測定値の信頼性が向上した。成人男性30名の1日スズ摂取量は最小値1.5μgから最大値2280μg、中央値5.3μg、女性81名では1.8μgから2291μgで、中央値5.7μgであった。1日スズ摂取量が1mgをこす摂取者は男性2名、女性3名で、男女間の摂取量には差を認めなかった。20組でみた夫婦間のスズ摂取量はよく相関した(r=0.995)。スズ摂取量を増加させる原因は缶詰食品摂取であった。結語】1)スズ測定には高純度試薬の使用が必要である。2)日本人のスズ摂取量は低値で、中央値は5.3μg/日、女性5.75.3μg/日であった。3)缶詰食品によりスズ摂取量は顕著に増加した。
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