本研究では、根圏の成長にともない根茎や根が縦横に張り巡らされ土壌と置き換わるルートマット化に着目して、その過程で生じる土壌中の有機物分解・減量化のメカニズムについて、富栄養化した湖沼底質を植栽土壌として種子から発芽させたヨシを生育させる実験ポットを用いて検討を行った。 ヨシ地上部と地下部の増加のパターンは、地上部と地下部の乾燥重量比であるTop/Root (T/R)比を用いて表すことができた。このT/R比の変化は、土壌中の有機態炭素の減少パターンと少なからず関連性があることが示唆された。 ヨシ根圏における有機物の消長は、地上部から地下部への光合成産物の輸送・貯蔵にともなう土壌中への滲出と地下部の分解にともなう溶出による供給、地上部から根圏へと拡散供給される酸素を利用する好気性微生物による分解、ヨシの植栽が無くても本来土壌表層で起こる好気性分解によって起こる物質収支モデルで表すことができた。 植栽して間もないヨシの場合、ヨシ植栽の効果が現れにくいが、植栽後年数が経過したヨシの場合には、春季の萌芽の時期に供給よりも分解が卓越して土壌中の有機物減量が起こりやすくなることが示唆された。また、刈り取り時期の制御により、地上部からの有機物供給を抑えながら土壌有機物分解を促進する手法の開発の可能性が示唆された。
|